米債務上限停止法案が上院でも可決、デフォルト回避へ

米国連邦議会上院は6月1日、連邦債務の上限を停止する「財政責任法案」を賛成63、反対36で可決した(注1)。同法案は、前日の5月31日に下院が可決し、上院に送られていた。米国債などが債務不履行(デフォルト)に陥るとされる6月5日を念頭に、民主・共和両党の指導部が今週中の採決を目指してた。多くの両党議員が賛成に回り、タイムリミットを待たずにスピード採決となった。

同法案の採決では、11本の修正案が同時に提出された。いずれかの修正案が可決された場合、下院で再度審議・採決などが必要となり、6月5日までの可決が危ぶまれていたが、全て否決された(ブルームバーグ6月1日)。この結果、連邦政府の債務借入残高の上限(現行31兆4,000億ドル)の適用が2025年1月1日まで停止され、2024会計年度(2023年10月~2024年9月)の国防費以外の支出はほぼ現在の水準に据え置かれる。また、2025年度の国防費以外の支出も前年比1%増に抑えられる。

反対票36票のうち、共和党が31票、民主党が5票(注2)で、民主党からも反対票が投じられた。上院の与野党勢力は民主党51対共和党49と拮抗(きっこう、注3)しており、上院の法案可決には賛成票が60票以上必要だが、今回の採決でこれを上回った。

法案は、ジョー・バイデン大統領の署名を経て正式に発効となる見通しだ。バイデン大統領は上院での可決後に声明を発表し、「今回の超党派による合意は、米国経済と米国民にとって大きな勝利」と述べた。他方、米国債などのデフォルトは回避されたが、懸念はまだ残る。オバマ政権下の2011年8月には、連邦議会が今回と同様、デフォルト直前に債務上限の引き上げに合意したが、民間格付け会社がデフォルト発生リスクの上昇を踏まえて米国債の格下げを発表し、金融市場が大きく混乱した。今回もデフォルトリスクが大きく懸念された状況を踏まえ、民間格付け会社が同様の対応をとる可能性が残されている。

また、今回の法案で示した2024年度の支出の据え置きは、2024年度予算教書で発表した内容と大きく異なる。法案採決の際、上下両院の両党から一定の反対票が投じられたことから、2024年度予算案審議の難航も予想される。

(注1)そのほか、棄権が1票。

(注2)民主党会派の無所属議員による反対票1票を含む。

(注3)民主党会派の無所属議員の3議席を含む。

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